インドネシア語でリーダーを意味するPimpinanとPeminpinはどう違うのか?

辞書では “Pimpinan” も “Peminpin” もリーダー (Leader) と定義されています。どちらも語幹は “Pimpin” という動詞なのですが、インドネシア語ネイティブはどうやって使い分けているのでしょうか? HiNative.comで質問してみたところ、ニュアンスが結構違うことが判明! 事例別に使い方を解説します。

Official logo of HiNative
2021年1月にHiNativeで質問

先に例文を提示してみます。

  1. Dia adalah pimpinan bank itu. = 直訳すると「彼女はあの銀行のリーダーです」(She is a leader of that bank)
  2. Kami memulai pemilihan pemimpin. = 直訳すると「私たちはリーダー選挙をスタートさせます」(We start the election for a leader)。

Pimpinan も Pemimpin もリーダーです。どう違うのでしょうか?

接頭辞と接尾辞の仕組み

ちなみにインドネシア語では動詞の前に “Pe-” を付けると、「○○する人」の意味になります。英語とメカニズムは似ていて、動詞Singの後ろに “-er” をつけてSingerに変えれば歌手ですよね。同じく、動詞Pimpin (リードする、指揮を執る) の前に “Pe-” をつけると、”Pepimpin” –> 音のつながりがおかしいので、リエゾンして “Pemimpin” になり、インドネシア語でリーダーの意味になります。

また、インドネシア語で動詞や形容詞などの後に “-an” を付けると、名詞化します。例えば働くという動詞は “Kerja” で、この動詞の前に “Pe-” を付けると “Pekerja” は働く人 (Worker) になります。さらに “Pekerja” の後に “-an” を付けて “Pekerjaan” にすると職業 (Work/Job/Occupation) になります。

ではリードするという動詞Pimpinの後に “-an” がくっついた “Pimpinan” と、前に “Pe-” がくっついた “Peminpin” は何が違うのか?という疑問が出てきます。

ということで、事例を交えながらインドネシア語のネイティブに解説してもらいました。

事例1 — 学校の班長さん

日本の小学校だと、クラスをいくつかの班(グループ)に分け、ちょっぴり優等生な子が班長をやりますよね。とは言えども、班長とそれ以外の生徒の間では大きな序列があるわけではありません。

さて、この班長さんが何か悪さをしたとして、先生にバレてしまいます。先生は

「コラ!あなたはリーダーでしょ!そんなことしちゃダメよ」

と叱りつけました。こんな時、実は “Pimpinan” と “Peminpin” のどちらかしか使えないのです。解説は後述しますので、どちらが正解か、皆さんも考えてみて下さい。

事例2 — 会社の経営者

あなたは、とある会社の秘書室で働いている派遣社員です。役員にお茶出ししたり、役員会議の資料を印刷・配布したりするのがお仕事で、同僚の派遣社員も数名が同じ業務に従事しています。

これから重要な役員会議が始まります。全役員が会議室に揃ったところで、あなたは他の同僚に対して

「役員(会社のリーダー)が揃ったから、以降は社員が部屋に出入りしないようお願いしますね」

と声を掛けます。このようなシチュエーションでもやはり “Pimpinan” と “Peminpin” のどちらかしか使えないのです。というか、間違った方を使うと全然違う意味になってしまいます。解説は後述します。

事例3 — ボーイスカウト

再び子供の設定に戻ってもらいます。あなたはボーイスカウトに属していて、リーダー格として普段は他の子供に指示を出しています。ボーイスカウトの活動(例えば募金活動)を終えて、ボーイスカウトを監督する大人に、指揮権限を戻します。活動終了して解散する前に、大人に終わりの一言を頂戴するイメージです。

「ここからはリーダーにお戻しします」

とあなた(リーダー格の子供)が言います。このシチュエーションでもやはり “Pimpinan” と “Peminpin” のどちらかしか使えないのです。

正解と解説

  • 事例1: 学校の班長さん — Peminpin しか使えません。
  • 事例2: 会社の経営者 — Pimpinan しか使えません。
  • 事例3: ボーイスカウト — Pimpinan しか使えません。

事例1でPeminpinを使うのは、班長さんとその他の生徒が、同じ階級に属するからです。先生と生徒のような上下関係はありません。仮に班長さんをPimpinanと呼んでしまうと、その子供(班長さん)は皇室出身ですか?みたいな違和感を醸し出してしまいます。

事例2では、派遣社員が勤め先企業の経営陣のことを指して「リーダー」と言っているので、Pimpinanを使います。派遣社員と経営者では、圧倒的な権限の差があり、上下関係が明確だからです。社外の人から見ても、経営者はその肩書から会社の「リーダー」だと分かります。仮に派遣社員がこの文脈で Peminpin を使ってしまうと、経営者のことを我ら派遣社員の間における「お局様」的にみなしている意味になってしまいます。

事例3では、リーダーという「人」を指しているのではなく、「リーダーシップ」という権限を指しているので、権限移譲にはPimpinanしか使えません。先述の通り、”Pe-” に動詞をつけると○○する人という意味になります。仮にこのボーイスカウトの文脈で Peminpin を使ってしまうと、男子と女子が廊下でぶつかって体と心が入れ替わっちゃった、みたいなマンガのストーリーみたいになってしまいます。


例文付きでこの素晴らしい回答をHiNativeに寄せてくれたインドネシア語ネイティブの @krfsp さん、本当にありがとうございました! 前回記事で紹介した「大きい」Lebar と Besar の違いでもkrfspさんが回答してくれました。説明がお上手です。


この解説記事はお役に立ちましたでしょうか?


参考: ヘッダーに使用しているフリー画像のリンク。作者はTumisuさん。

Leave a comment